・・・うっ・・・
糸里は、泥に塗れた自分の体をみて、そして男に捨てられたみじめさから嗚咽した。
そして蹌踉けながら立ち上がろうとした時、その肩を押し下げられた。
「立つな、そのまましゃがんで顔を伏せていろ」
「えっ」糸里が振り返ろうとした時、バサッと何かが頭より被せられた。
「ひっつ」恐怖のあまり再びしゃがみ込む。
「いいか、両手で顔を覆い、そして百数えていろ。数え終わったら来た道をれ、 さすれば・・・お前は助かる。 だが、男を追えば・・・斬る。」
男の声が暗闇に響いた。
突然背後に現れたこの男は誰なのか・・・なぜ、数を数えねばならないのか・・・ なぜ、あれほど愛しんでくれた平間が・・・自分を捨てたのか・・
女は必死に考えようとした・・・が、 眼を塞ぐ暗闇が唯一の助かる道を指し示す。
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