新撰組活劇 沖田総司絵巻第一章「泥濘」二

第一章「泥濘」二
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新撰組活劇「幕末新撰組絵巻 沖田総司物語」の小説は縦書きをメインとしていますが、横書き版小説も下段に掲載しています

幕末新撰組絵巻〜沖田総司物語〜第一章「泥濘」:237頁横文字版小説


鬼の形相と化したかと見紛うほどの男の恐怖と苛立は、女を一層怯えさせた。

「いやっ、もういややっつ
はなしておくれやすっ、うちはあんさんとは関係おへんっ
はなしてっつ」

女が男を突き放し濡れた地面にしゃがみこみ泣き叫ぶ。


「糸里っつ」
平間重助は、この芸妓糸里に惚れ込んでいた。

・・・俺は、お前に惚れているんだ・・・だからこそ、
こうして足手まといとなること覚悟の上で、お前を連れ逃げているんだ・・・
なのにっ

こんな処でもたもたしていては、追っ手に追いつかれる・・・

平間重助は、道に伏せ泣く糸里に未練を残しながら、命への執着に
じりじりと女の側から歩を下げる。
糸里に向けられていた顔は、前方に続く逃げ道へと向き直された.。
平間が走り始めた。

その姿に、男が自分を見限ったことに、
見捨てたことに気付いた女が罵るように叫んだ。

「平間はんっつ」

男の耳には女の声はすでに届かなかった。
 

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