バシャッ バシャッ バッシャッツ
「あっ」
女がぬかるんだ土に足を取られ、蹌踉ける 男が女の二の腕をグッと強く持ち上げる・・・
「しっかりしろっ、糸里っつ」
男はか細い肩を抱き寄せ、女を急かせるように励ます。
「平間はん、あんおひとらなんどすの? なんでうちらの寝やに・・・何処までいかはるの? なんでこっちに?こんな暗い道、うち怖い・・・大通りに出て、 お番所にいきまひょ、 お役人に助けてもらいまひょ? なっ」
平間重助は、何も分からず、ただ怯え、 思い立ったことを次々に口にしている糸里の言葉に 何一つ返答してやろうとしなかった・・・いや、できなかったのである。
・・・番所だと?役人だと? そんな連中が歯の立つ相手などではないっ・・・ 連中は事を決行したのだ・・・以前から薄々は気付いていた筈なのにもっと早くに身を隠すべきであった。
「くそっつ」 ギリギリと歯を噛み締め、平間の唇より血が流れた。
|