「いいかっ、決して逃がすな、 必ず仕留めろっつ」
土方歳三のその命令を待っていたかのように総司は踵を返す。
そして駆け出そうとした時、土方が自分の懐から何かを出し、 沖田総司に投げつけた。
パシッ
総司は反射的にそれを受け取る。 それは、五尺程も有ろうかという黒い手拭だった。
土方は、振り向きもせずに、 ただ自ら手にかけた梅の躯を見つめながら呟いた。
「平間の女は斬るに及ばぬ・・・ 我々に、新撰組に深く関わってしまった・・・このお梅とは違う 顔を見られなければ、捨て置け・・・」
総司は微かに口元をほころばせ手拭を懐に忍ばせた。
「承知っつ」
返答を残し、 沖田総司の姿が、部屋から消えた。 |