男は、血糊がまとわりついた刃を拭うこともせず、 右手に隣接する芹沢の部屋、梅のいる部屋に歩を進める。 バンッ 雨戸を、戸板を蹴り倒す激しい音が鳴り響いた。
・・・しくじったかっ・・・男が左手に隣接する部屋に意識を飛ばした。
平間重助は、普段からあまり酒を口にしなかった。いわゆる下戸である。 それが、功を奏したのであろう・・・ いや、彼はすでに角屋の宴より警戒していたのかもしれない。 近藤勇らの態度がいつもと「違う」そう感じとっていた。 何がどうだと言えない、直感が彼にそう警告したのである。
平間の部屋に男たちが忍び込んだ時、平間はすでに鞘より刀を抜き放っていた。 そして、侵入者の刃を交わし、床を共にしていた遊女糸里を連れて逃げたのだ。
雷でも落ちたかと思うほどの、雨戸が蹴り飛ばされる激しい音に
「な、なにっつ」恐怖のあまりお梅は部屋を出ようと手を障子にかけた ・・・がそれは、一人の男によて開けられた。
「あ・・・あんさんはっ」
梅の目の前には、平山五郎の血を滴らせた刀を持った男が立っていた。 |