・・・カラ・・・
隣の障子を引く音と共に、キシキシと廊下が鳴る。 少し軽やかな足音は、女の者に違いない・・・
男との寝やの最中に手水に抜けるなど、無粋なことである。
「ふん、しゃっちもない女郎や」お梅は、飽きれたように呟いた。
お梅の察しの通り、平山五郎が連れ帰った小栄という女が、厠に行く足音であった。
いそいそと厠に向う小栄に忍び寄る影があった。
そして、その影は背後より女の口を押さえた。 「ふぐっ」 何が起こったのか・・・
叫びたくとも大きなゴツゴツとした手が抑え込むように小栄の口を塞いでいる。 そして帯の結び目を外すように脇腹に冷たい物があてがわれている。
それが何なのか、背後の男の声でわかった。
「よいか、けっして声をだすな、振り向けば刺す。」
そう、間違いなく自分の脇腹には刀の刃が突きつけられているのだ。
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