増田は、自分のかわりに弄ばれたのだ・・・この女に・・・総司は確信した。
そして、振り返った。 だが、その顔をみた梅は凍りついた。
沖田総司の顔に人としての表情が浮かんでいなかった。 ただ、その眼は、地獄絵図に描かれた鬼のように 見開かれていた・・・
梅は、身を竦ませ、その場にしゃがみこんでしまった。
先ほどの永倉の怒りがまるで沖田総司に乗り移ったかのように・・・ いや、それは増田五郎の無念の怨念のようでもあった。
総司はその場を立ち去りながら、増田の無惨な姿を思いだしていた・・・ 自分のせいだ・・・自分のせいで、増田は死んだのだ。
「あの女は、お前にいかれちまっているな。」 永倉新八を落ち着かせて戻ってきた土方歳三が傍らに来ていた。
「私のせいですね・・・ 私があの女の相手をしておいてやれば、増田さんは・・・」総司は悔しかった。
人の死にはなれている、 だが自分のために意味のない死に方をした人間がいるのは堪えられなかった。
「男は女に狂い、女は男に狂う それが、性(さが)ってもんだ。誰のせいでもないさ」
男と女などそんな生き物だ・・・と土方は空を仰いだ。 |