「切腹申しつくべく・・・」その言葉が現実と受け止めたものは、脂汗をながし、 「まさか・・・」と疑ったものは、平常心で受け止めた。
だがこの『局中法度』こそが、多くの隊士たちの血を吸うこととなる恐怖の掟と なるのである。 土方歳三は、けっして近藤勇に隊士達に向かって、この『局中法度』を読ませるつも りはなかった。 読み上げ、皆の恐怖心を向けさせる的は自分でなければならなかった。 近藤勇という人物には決してそんな憎悪に近い感情を向けさせてはいけなかった
・・・新撰組の恐怖、憎悪は全部自分がうける・・・それが、俺の役目だ・・・ そう心に決めていた。
「土方さん、かっこいいですね」 近藤以外にそんな土方の決意を見抜いている沖田総司はいつも口ではそうちゃかすのである。
だが、隊の中での恐怖と外での恐怖・・・ 違いこそあれ、総司もまた、恐怖と憎悪の的であった。
「あの沖田総司の刃が鞘から抜かれるとき、青白く光るとき・・・ 間違いなく人が死ぬ。」
「壬生の青鬼・・・」
倒幕志士たちからそう恐れられるようになっていた。 |